top of page
≪私の誕生日≫
小島麻由美さんの「私の誕生日」を聴いてくださいという文章です。
「何が欲しい?」
9月13日、眉を顰めながら私は瞼を閉じた。
広がる世界の眩しさに手を前に回すも、すぐに慣れ、辺りを見渡す。
見たことは無いがよく知る世界なのに、直観する。ここは「私のいない世界」なのだと。『私の生まれて来なかった』『私の存在しない』世界だと。
ここにいる皆には分からないだろうが、私にはなんだか透明でキラキラ輝くように見える。
誰も私の名を知らない、容姿も見たこと無い、親も姉も私なんか知らない。
私の作った曲も絵もこの世に存在しない。それによって影響を受けた人もいない。本当に何も無い。
やっと分かった、私の欲しかったのは………。
翌日、まだ溶けた泥のような身体を起こすと、もう昼近い。
私の誕生日になっていた。
終
bottom of page